修正BSDライセンスの条文を読む (3)

前々回、前回の続きで、修正BSDライセンス(New BSD License)の条文(英語)を読みます。
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免責条項

箇条書きの後に書かれている、免責条項の部分を見ていきます。この部分は一つ一つの文が長いので、適当な長さに区切って読みます。また、原文では全て大文字で書かれていますが、ここでは通常の表記で記載します。

1番目の文(前半)

1番目の文の前半部分(andの前)です。


This software is provided by the copyright holders and contributors "AS IS"

as is
現状のまま
日本語では「現状有姿」と表現されることもあります。

この文は、動詞の部分が「is provided」と現在形になっており、普遍的な事実を表しています。つまり、将来にわたって成立する事柄を述べています。また、「as is」はソフトウェアライセンスに関する文書で頻繁に登場する表現です。

日本語訳は以下のようになります。


このソフトウェアは、著作権者やコントリビューターによって【現状のまま】提供されるものとします。

つまり、バグが発覚したり、ユーザからの機能追加依頼があったとしても、著作権者やコントリビューターはソフトウェアを改修する義務を負わないということを述べています。*1

1番目の文(後半)

1番目の文の後半部分(andから後)です。


and any express or implied warranties, including, but not limited to, the implied warranties of merchantability and fitness for a particular purpose are disclaimed.

express
明示された、明確な
implied
暗黙的な、言外の
A, including, but not limited to, B
Bを含み、それ以外も含む可能性があるA
merchantability
商品性
「商品としての十分な品質を備えていること」を指しているようです。
disclaim
(責任などを)拒絶する

「any express or implied warranties」が主部であり、最後の「are disclaimed」が述部になります。間にある「including, ... particular purpose」は、「any express or implied warranties」を修飾しています。また、「including, ... particular purpose」の部分に単語のまとまりを示す括弧を入れると、「the implied warranties of ( (merchantability) and (fitness for a particular purpose) )」となります。

わかりやすくすると、このような意味になります。


このソフトウェアは無保証です。(このソフトウェアに対して保証が明示されているということはありません。また、言外の保証も一切ありません。言外の保証には、例えば、商品として十分な品質を備えているという保証や、特定の目的に対して適合するという保証が含まれます。)

2番目の文(前半)

2番目の文の前半部分(forまで)です。


In no event shall the copyright holder or contributors be liable for ...

in no event
いかなる場合も〜ではない
shall
〜するもとのする、〜と定める
契約書でよく使われる表現です。
liable
(法的な)責任がある

この文では倒置が使われています。もう少し詳しく説明すると、否定的な意味の副詞句(ここでは「in no event」)を先頭に移動するタイプの倒置です。*2 わかりやすいように「in no event」と「shall」を倒置していない場合の位置に戻すと、次のようになります。


The copyright holder or contributors SHALL be liable for ... IN NO EVENT.

また、forから後の部分はかなり長いのですが、短くまとめると「any damages」となります。(詳細は次回) この部分を「any damages」に置き換えて考えると、次のようになります。


The copyright holder or contributors SHALL be liable for any damages IN NO EVENT.

日本語訳は次のようになります。


著作権者やコントリビューターは、いかなる場合であれ、どんな損害賠償に対しても責任を負わないものとします。

結局のところ、この文も1番目の文と同様、ソフトウェアが無保証であることを述べています。ただ、2番目の文では、forの後の部分で、損害賠償の種類が具体的に記述されています。
また、前回の記事でも少し書きましたが、コントリビューターは著作権者とは限りません。この文で著作権者だけではなくコントリビューターについても触れているのは、著作権を譲渡したコントリビューターも免責事項の対象となることを明示するためだと思われます。


今回はここまでです。次回は、2番目の文の後半部分を見ていきます。
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*1:改修した場合はバージョンが変わるので、ライセンス的には別のソフトウェアという扱いになる? (自信なし)

*2:文法的なことを知りたい方は、「英語 倒置 否定」などのキーワードで検索してください。