修正BSDライセンスの条文を読む (2)

前回の続きで、修正BSDライセンス(New BSD License)の条文(英語)を読みます。
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箇条書きの前の部分

箇条書きの前の部分を見ていきます。


Redistribution and use in source and binary forms, with or without modification, are permitted provided that the following conditions are met:

redistribution
再頒布 (再配布)
「再頒布」と訳されることが多いようです。*1
modification
改変
ソースコードの修正やバイナリに対してのパッチ適用などが該当します。
provided that 〜
もし〜ならば
「only if」とほぼ同じ意味です。
the following conditions
次の条件
箇条書きになっている部分を指しています。

「Redistribution and use」が主部で、「are permitted」が述部になります。その間の「in source and binary forms」と「with or without modification」は、それぞれ「Redistribution and use」を修飾します。

わかりやすくすると、このような意味になります。


(このソフトウェアの)再頒布/使用は、次の条件(箇条書きの部分)を全て満たす場合に許可されます。対象となるソフトウェアがソース形式かバイナリ形式かは問いません。また、改変の有無も問いません。

1番目の条項

箇条書きの1番目です。この条項では、ソース形式での再頒布について規定しています。


  • Redistributions of source code must retain the above copyright notice, this list of conditions and the following disclaimer.

retain
〜を保持する
the above copyright notice
上記の著作権表示
「Copyright (c) ... All rights reserved.」の部分を指しています。
this list of conditions
この条件一覧
この箇条書き(3条項)を指しています。
the following disclaimer
次の免責事項
箇条書きの下の大文字で書かれた部分を指しています。

retainの目的語は「the above copyright notice」、「this list of conditions」、「the following disclaimer」の3つです。

わかりやすくすると、このような意味になります。


  • ソース形式で再頒布する場合は、「上記の著作権表示」、「この条件一覧(3条項)」、「次の免責事項」を残さなくてはなりません。

「上記の著作権表示」、「この条件一覧(3条項)」、「次の免責事項」ということは、結局のところ、このライセンスの文章全体ということになります。つまり、このようにも言えます。


  • ソース形式で再頒布する場合は、このライセンスの文章全体を残さなくてはなりません。

要するに、このライセンスの記述(大抵は単独のテキストファイル)を配布物に含めておけば、この条件を満たすことになります。

2番目の条項

箇条書きの2番目です。この条項では、バイナリ形式での再頒布の場合について規定しています。


  • Redistributions in binary form must reproduce the above copyright notice, this list of conditions and the following disclaimer in the documentation and/or other materials provided with the distribution.

reproduceの目的語は「the above copyright notice」、「this list of conditions」、「the following disclaimer」の3つです。また、その後の「in 〜 distribution」は、reproduceを修飾しています。

わかりやすくすると、このような意味になります。


  • バイナリ形式で再頒布する場合は、このライセンスの文章全体を何らかの形で含まなくてはなりません。

内容的には1番目の条項とほぼ同じですが、ここではバイナリ形式の場合について述べています。1番目の条項と同じく、このライセンスの記述を配布物に含めておけば、この条件を満たすことになります。

3番目の条項

箇条書きの3番目です。この条項では、著作権者名の取り扱いについて規定しています。*2


  • Neither the name of the nor the names of its contributors may be used to endorse or promote products derived from this software without specific prior written permission.

neither A nor B may be used
AもBも使ってはいけない
contributors
コントリビューター(貢献者)
ソースコードの提供者のことです。
endorse
〜を支持する *3
promote
〜の普及を促進する
products derived from this software
このソフトウェアから派生したプロダクト
このソフトウェアの改変版を指しています。
specific prior written permission
事前の書面による特別な許可

テンプレートの中のは、実際のライセンスの条文の中では、著作権を持つ組織の名前に置き換えられます。*4

「Neither 〜 may be used」がこの文の本体です。「to endorse 〜 from this software」と「without 〜 permission」は、それぞれ本体を修飾しています。

わかりやすくすると、このような意味になります。


  • このソフトウェアの改変版を普及させるために、このソフトウェアの著作権者の名前(もしくはコントリビューターの名前)を【勝手に】使用してはなりません。使用したい場合は、事前に書面による許可を得てください。

つまり、改変版の宣伝等で、オリジナルのソフトウェアの著作権者名(もしくはコントリビューターの名前)を勝手に使用してはいけないということです。
また、条文の中でコントリビューター(=ソースコード提供者)に触れていますが、コントリビューターが著作権を持っているとは限りません。例えば、オープンソースプロジェクトに著作権を譲渡している可能性があります。この条文では、そのような著作権を持たないコントリビューターであっても保護の対象となります。(2010/08/11 コントリビューターについて追記)


今回はここまでです。次回は残りの部分を見ていきます。
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*1:「頒布」と「配布」の違いはよくわかりません。

*2:二条項BSDライセンスでは、この条文が削除されています。

*3:この条文での「endorse」の意味がいまいち分かりません。

*4:個人開発者の屋号など、厳密には組織名でない場合もあるかもしれません。